京都大学大学院工学研究科 工学基盤教育研究センター

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2022年度グローバル・リーダーシップセミナーⅡ実施の様子

グローバル・リーダーシップセミナーⅡ(イノベーションとその事業化)では、社会が京大生に求める、自ら課題を見出し、解決への道筋を提示するという能力を身につけることを目指します。工学系の様々な分野の学生・教員に加え、イノベーションの最前線で活躍している方々を招き、専門分野や産学の垣根を超えたメンバーでワークショップ形式の議論を行うという、京大の数ある授業のなかでも特にユニークな授業です。出席は取りませんし予備知識も求めません。受講生に求められるものはやる気です!

ここでは2022年度の授業の様子を紹介します。2022年度は講義12回、合宿1回、発表イベント1回の実施となりました。1単位の集中講義ですが、2単位の講義以上の時間を費やすことになりました。今年度は履修登録者15名(うち1名は昨年度に続く履修者)と、2021年度の4名から大幅に増加し、さらに全コマを通じて対面で実施できたこともあって、賑やかさが増した講義となりました。理学部からも1名が聴講願を提出して参加してくれることになりました。履修者たちは、みなさん少なからず講義を通じて実現したいアイデアを、しかも1つではなく複数持っており、とても驚くと共に感心しました。したいことを考えるという段階がなく、したいことを絞り込むという作業から入りました。

 

著名な開発者・研究者によるオンサイトセミナー

第2,4,6回の講義は、著名な開発者・研究者によるセミナーです。多くのことを成し遂げてきた先達の話を聞いて、イノベーションや事業化の”勘所”を学ぶことは大事です。

そこで、半導体材料創出で多くの成果を挙げてきた立命館大学教授の金子健太郎先生、世界を変える数多くの発明を生み出した功績によって紫綬褒章、旭日小綬章を受賞された大嶋光昭先生、京都大学工学部長・副学長を歴任し、現在はベンチャー育成に力を注ぐ西本清一先生、そして大会社におけるイノベーションを成し遂げ入社2年目にして統括課長に就任した對馬哲平先生に講演を頂きました。

  • 10/14 第2回: 金子健太郎 立命館大学教授
  • 10/28 第4回: 大嶋光昭 京都大学特命教授・パナソニックホールディングス(株) 名誉技監
  • 11/11 第6回: 西本清一 京都大学名誉教授・公益財団法人 京都高度技術研究所 理事長
  • 11/26 合宿 : 對馬哲平 京都大学特命教員・ソニー(株)モバイルコミュニケーションズ事業本部 wena事業室 統括課長

 

アイデアを出し練り上げていく、対面グループワーク(前半)

実施日:10/7, 21, 11/4, 18

10/7の第1回講義で、講義の趣旨や大まかな流れを説明します。本講義は基本的にグループワークによって、自分たちのアイデアを形にし、それがビジネスとして成立するかどうかを磨いていく、という流れで進みます。そのため、グループを組むことを勧めていますが、個人でやりたいことが固まっている人は個人製作をしても良いということにしています。第1回はチュートリアルなので、グループ分けまでは進められません。

そこで、10/21の第3回講義で、パナソニックホールディングス(株)主任技師の青山秀紀様を外部講師としてお招きし、「アイディエーションのためのグループワークとチームビルディング」という題で講演をして貰いました。「アイディエーション」なんて横文字を聞いたのが初めてだったのは、私だけでは無いはずです。その後、履修者同士の親睦を深めるアクティビティ、マシュマロチャレンジをしました。ルールは簡単で、各グループ4名程度とし、決められた時間の間に乾パスタ十数本、テープ、ひもなどを作って安定な構造物を作り、最も高いところにマシュマロを刺せたチームが優勝、というものです。優勝チームは48cmという好記録でした。

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製作終了後の計測タイムにタワーが崩壊して涙をのむチームも現れ、親睦は深まりましたが、遺恨?も残りました。

教員と学生で議論を重ねるうちに、徐々に学生たちの考えが具体的にまとまってきて、自分たちの目指す方向性が見えてきました。大袈裟に言えば、志を同じくする人たちがグループを組み、最終的に、2名で行うプロジェクトが2つ、6名で行うプロジェクトが1つ、個人製作が4で構成されることになりました。チームの中でも複数のプロジェクトを抱えているところもあります。今年度は制作費はそれほど大きく確保できなかったため、概ね人数で制作費を按分することを事前に通知することにしました。

 

合宿@関西セミナーハウス

実施日:11/26,27

本講義の大きな特色の一つは、教員と学生、外部メンターが合宿を行う、ということにあります。昨年度はコロナ禍のために合宿が挙行できず、代わりに終日ディスカッションという限りなくストイックなイベントになってしまいましたが、今年はコロナ禍前のように合宿を開催することができました!「講義室に1日缶詰で丁々発止」から「宿泊所で飲み食いしながらワイワイ合宿」となり、自然と顔もほころびます。

紅葉が綺麗な時期に、修学院にある関西セミナーハウスで足かけ24時間にわたる合宿を行い、履修者同士のみならず、教員や外部メンターとも膝を突き合わせ、夜遅くまで熱い議論が交わされました。学生14名の他、教員2名、外部講師5名が参加しました。また、合宿には昨年度受講した学生も、増加単位として履修登録し、参加してくれました。彼からは、昨年度の講義受講で成し遂げたこと、成し遂げられなかったことなどをしっかりと語ってくれました。また、彼は昨年度で製作した製作物を引き続き改良しており、その進展も披露してくれました。
オンラインにて對馬先生から講義を頂き、さらに 向井務 パナソニックホールディングス(株)コーポレート戦略・技術部門 インテリジェンスグループ 上席主査 からはイスラエルにおけるイノベーションなど、普段聞くことのできない話を伺い、かなり盛り上がりました。

合宿の大きなイベント?の一つに、マシュマロチャレンジ・リターンズがあります。第3回講義で涙を飲んだグループは、雪辱を果たすまたとない機会です。合宿時にはグループが決まっていたため、第3回のグループ割りと同じではありませんが、各人、マシュマロに懸ける胸に秘めたる熱い思いがあります!最終的に、チームBlue他が優勝し、その記録たるやなんと71cmということで、その記録の伸張ぶりには驚きを禁じ得ません。

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しかも、このマシュマロタワーはその後場所を移しても、また翌日になっても、たわむことはあっても壊れることはなく、撤収時に壊すまでその威容でもって学生たちを見下ろしていました。

メンターの方たちから繰り返し指摘されたことは、「商品・サービスは消費者がいてこそ市場での存在価値があるため、しっかりのユーザーのニーズを掴むべく調査しなくてはいけない」ということでした。学生たちはこの日も含め、その後しっかりと自分たちの”足で稼いだ”情報を元に、アイデアの具現化に務めていました。自分たちのアイデアを他人に話して理解して貰い、その上で彼ら・彼女らから情報を取得して、それを自分たちのアイデアにフィードバックすることは、それほど容易いことではありません。それにも係わらず、ほとんどのチームがこれをしっかり行ったことに、とても感心しました。

group photo at the camp

 

アイデアを出し練り上げていく、対面グループワーク(後半)

実施日:12/2, 9, 16, 1/13, 20

合宿も終わり、いよいよ講義も後半戦に突入です。ほとんどのグループはアイデアが固まっているので、この頃からは講義の時間中はグループごとに集まって製作に勤しんでいます。もちろん、講義の時間中だけではできないので、自宅に帰ってから行う仕事の分担を決めたりといった作業も、講義時間の重要な役割です。

アイデアを煮詰めていくうちに、やはりこのビジネスプランでは市場に出しても勝ち残っていけない、ビジネスとして成立しにくい、顧客層や顧客ニーズがイメージしにくい、といった事実に気付く場合があります。それは、元のアイデアがしっかりしていなかったからではなく、むしろ時間を掛けて真剣にじっくりと検討した結果ようやく導き出せる結論であり、それにかけた時間はとても意義深いものです。そういった方向転換は、学生と教員が議論を重ねながら進めていきます。

実際に製作に進むと、思い通りにいかないことは多いです。既にマシュマロチャレンジで嫌というほど思い知ったとおりです。新しいモノやサービスを作ろうとするのだから、これまで存在しなかったことには理由がある可能性が高いのです。それは、誰も思いついていないアイデアであるならば美しいストーリーなのですが、それほど皆が必要と思っていないモノであったり、技術的に現実化が難しいモノであったりする事もあり得ます。やはりアイデアをモノやサービスに落とし込むには試行錯誤が必要で、試作を繰り返しながらの理想と自分の技術力の摺り合わせもまた、大事な作業です。

講義の終盤には、講義の集大成として1/21に桂ラウンジにて開催する「ビジネスプラン発表会」を見据えた作業を進めます。製作と並行して、製作中のものをビジネスプランとしてどのように位置付け、どうまとめ上げるかについて講義を行います。また、10分発表、8分質疑の持ち時間に、自分たちの思いの丈を過不足なく伝えるための練習も欠かせません。講義最終日である1/20は発表練習会となりました。

 

イベント:ビジネスプラン発表会

  • 日時:2023年1月21日(土) 13:00-16:30
  • 場所:京都大学桂キャンパスBクラスター 事務管理棟3階 桂ラウンジ

 

フライヤー(チラシ)

審査員に、京都大学産官学連携本部より

  • 木谷哲夫 特定教授 産官学連携本部 イノベーションマネジメントサイエンス起業・教育部

をお迎えいたしました。更にこれまで継続的にご協力を賜ってきたメンター4名の方にも講評者としてご参加頂きました(1名はオンライン参加です)。

各チーム・個人からの発表

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イベントを終えて

著名な民間企業の要職を歴任し、京都大学において起業家教育プログラムの開発・実施に従事しておられる木谷哲夫先生をお迎えし、現場を熟知している方しか分からない視座から、発表者に対して多くのコメント、改善提案、励ましなどが送られました。また、講義を通じて常に建設的なフィードバックをして頂いた講評者の方々からも多くのコメントを頂きました。自分たちのアイデアを披露し、第一線の方々から審査・講評頂くことはめったにある機会ではなく、そのチャンスを十分活かしてやりきった受講生たちには感心するほかありません。学生たちは、この経験を糧に、活躍の場を広げて欲しいと思いました。

group photo at the event