京都大学大学院工学研究科 工学基盤教育研究センター

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GLセミナーⅡ(課題解決型演習)授業の様子と受講生の声

GLセミナーⅡ(課題解決型演習)では、社会が京大生に求める、自ら課題を見出し、解決への道筋を提示するという能力を身につけることを目指します。工学系の様々な分野の学生・教員に加え、イノベーションの最前線で活躍している方々を招き、専門分野や産学の垣根を超えたメンバーでワークショップ形式の議論を行うという、京大の数ある授業のなかでも特にユニークな授業です。以下、2018年度の授業の様子と受講生の声を紹介します。

10/19 開講
 ◯オリエンテーション
 ◯講義「持続的経済成長のための『オープンイノベーション』パラダイムー 基礎科学技術の研究開発を担う大学の役割 ー」(西本清一氏/(地独)京都市産業技術研究所, (公財)京都高度技術研究所, 京都大学名誉教授)

*授業のオリエンテーションに引き続き、西本清一先生より、「イノベーション」の概念について、理論的背景や科学技術史を踏まえたお話をいただき、本授業で考える「イノベーション」とはそもそも何なのか、ということについて理解を深めました。

 ◯グループ分けのためのアンケート実施

10/26 グループワーク演習
◯グループ分けの発表
◯講義・演習「グループワークの進め方」(青山秀紀氏/パナソニック株式会社)

*青山先生よりグループワークの進め方について講義をいただくとともに、講義で説明を受けた手法をグループにわかれて実践し、これから演習に取り組む上での心構えや議論の基礎を身に付けました。恒例(?)のマシュマロチャレンジも行い、盛り上がりました。

11/2 グループワーク①

11/9 グループワーク②

*グループワークでは毎回、模造紙や付箋、ペン等を使って、メンバーがお互いのアイデアを突き合わせながら議論を進めます。授業の最後にはグループごとにその日の成果を発表し、グループ間でも情報を共有しながら企画を煮詰めていきます。

11/16 中間プレゼン


*企画案について各グループ10分程度で発表し、ERセンターの教員を交えて議論しました。「電動車椅子」、「忘れ物防止タグ」「衣食住向上の総合サービス」などの提案が行われ、質疑応答や意見交換を通じて、各自が次のステップへ進むうえでのヒントや課題を得ました。

11/30 グループワーク③

12/7 グループワーク④  

◯ミニ講義「学生時代の起業について」(金子健太郎氏/工学基盤教育研究センター講師 )

*この日は、ERセンター講師である金子先生が講義を行い、イノベーションに必要な「コア技術」や「組織・体制」の重要性について学びました。各グループ、規格の形が見え始めてきたタイミングでもあり、アイデアの完成度を高める上でのヒントを得ました。

12/14 グループワーク⑤

 

12/15・16 合宿(於:琵琶湖コンファレンスセンター/滋賀県彦根市)

◯開会・趣旨説明

◯特別講義「成熟企業におけるイノベーション」大嶋光昭氏/パナソニック株式会社, 京都大学特命教授)

*日本を代表するイノベーターである大嶋先生より、イノベーターとはどのような人なのか、イノベーションを起こすための発想の方法、出口戦略の重要性等について、自身の発明・開発の経験を交えながらお話いただきました。

◯特別講義「大企業でイノベーションを起こすには」對馬哲平氏/京都大学特命講師)

*企業内ベンチャーに成功し、若手イノベーターとしていま注目を集めている對馬先生より学生時代から現在までの経験も踏まえ、多品種少量生産時代の開発とはどのようなものか、製品に込める思想や物語の重要性など、開発のポイントについてお話いただきました。

◯学生によるプレゼンとゲスト講師等による講評

*合宿にむけて各グループが作成した企画についてプレゼンを行いました。特にゲスト講師の先生方からは、開発の最前線での経験を踏まえ、的確で鋭い指摘がなされました。

◯グループワークによるブラッシュアップ

*プレゼンへの指摘を踏まえ、企画をさらにブラッシュアップしていきます。指摘を受けて内容が大幅に変わることもままあります。教員やゲストも同じテーブルで議論し、皆で案を煮詰めていきます。

*夕食時の様子。普段は接することがない所属学科が異なる学生や教員、ゲスト講師が懇親を深めました。

◯学生による最終プレゼン

*いよいよ最終プレゼン。今年度は最終的に「大学研究室設備の共同利用促進サービス」「能動的な選択・意思決定を提案する情報提供サービス」「高齢者と若者の趣味をマッチングするサービス」が提案されました。

◯総評・閉会

*総評と記念の集合写真撮影を行い、閉会。今年度も受講生は短期間で集中的な作業とディスカッションを行い、最終的な提案はどれも力作となりました。

 

1月中旬 最終レポートの提出  

*合宿での議論を踏まえ、最終的な企画を文書にまとめ、レポートとして提出します。

 

2018年度 受講生の声 

 具体的な課題を挙げ、アイデアを出し、それを整理し、解決策を考えるというプロセスやそういったことにグループで取り組むという機会が自分にはこれまでなかったので、この授業を通じてそれらを経験できたことは非常に貴重な体験となった。合宿では貴重なお話を聞けただけではなく、同じ学生側の意見も聞けて非常に興味深かった。漠然としていた将来のビジョンがこの講義を通して明確になった(物理工学科二回生)。

 授業全体を通して、自分自身がかなりステップアップできたと感じた。グループワークのやり方やアイデアを形にしていく方法などについての知識を得られた部分ももちろん大きいが、そういった一連の流れを短期間で集中的に体感できたことが特に良かった。大学の講義ではたいてい「その先」の部分は自分で想像するしかない。この授業は大学で学ぶ知識や技術の「その先」に何があるのか、もしくは何が作れるのかを想像するうえで大いに役立つ(物理工学科二回生)。

 ある事業について、周りの人と対話を重ねながら構想を膨らませていくという機会はなかなかないため、この授業は非常に価値のある経験となった。また、有名なエンジニアや工学部の様々な分野の教員の前でプレゼンテーションを行い、質疑に答えるという経験は個人的には非常に大変だったが、自分の将来のことを考えると非常に有益なものだった。また、合宿や講義の時間に様々な方から講演をいただくとともに、話をすることが出来たのは大変参考になった。これらの講演を聴くだけでもこの授業に参加する意義がある(電気電子工学科2回生)。

 合宿に入ってからグループで取り組んできたテーマをガラッと変えることになり、大変なこともありましたが、結果的には非常に良い議論ができました。自分は頭でっかちなところがあるのですが、グループワークでは良いメンバーに恵まれ、グループで議論することで、技術やビジネスの観点も踏まえてバランスよく事業の企画を練り上げることができました。先生方も常にアドバイスや声をかけてくださり、良い議論ができる環境をつくりあげていただきました(物理工学科三回生)。

 大嶋先生の講義を聞いて、まずその発想の斬新さや発明を生み出す手法に感銘を受けました。特に印象的だったのは、現在は著名な発明家である大嶋先生の下積み時代の経験であり、そのストイックさでした。對馬先生の講義では、まずそのプレゼンのうまさに惹かれました。非常に論理だった話し方で、話が頭に残りやすく、今でも様々な教訓を覚えています。また、特に印象的だったのが、論理だけでなく、自身の原体験などの個人レベルの具体的なエピソードも重視しているという点でした(物理工学科三回生)。

 西本先生の講義はイノベーションを生むための心得として、金子先生の講義はコアコンピタンスを形にする一つの先進事例として非常に参考になった。特に金子先生の講義は、技術を実際に運用していく際の内容も含まれており、自分は会社を持つことにも興味があるので、大変有意義だった(物理工学科二回生)。

 大嶋先生、對馬先生といった開発の現場で活躍されている方々のお話は言葉に重みがあり、質問対応もとても丁寧で、自分の将来についての質問も詳しく回答してくださった。また、合宿の晩御飯の席ではお二人と近くの席になり、より深いお話を聞くことができた(物理工学科二回生)。

 同じグループのメンバーとの連絡が密にできていたため、スムーズかつ内容の濃い議論ができた。また、先生方がグループワーク中にコメントをしてくれたり、ほかのグループがどのような進捗度合なのかを見ることができる環境だったのでメリハリのあるグループワークができたのも良かった(物理工学科二回生)。

 私はかなり自分の意見は強く主張するタイプなのですが、他の2名もそれに負けず主張してくれる人だったので、結果的にとても良い議論ができました。また、先生方の講義も各分野の最先端のおもしろいお話ばかりで、興味を持って聞くことができました(物理工学科三回生)。

 グループワークの際に先生方も一緒になって考えてくれたのがありがたかった。自分たちのアイデアや提案に対してすぐにフィードバックを得られるという点も良かった。自分たちだけではなかなか客観的な評価をしにくいが、議論の段階から先生がいてくれたので的確かつ客観的なアドバイスを得ることができた。発表に対するコメントも前向きで具体的なものが多く、最終発表や最終レポートを準備する際に大いに役立った(物理工学科二回生)。

 今年度は受講生の数が少なかったようだが、そのぶん、同じグループのメンバーとの交流だけではなく受講生全員と多くの意見交換をすることができてよかった。また、授業では先生方をいつも遠い存在と感じていましたが、この授業では先生方とも意見交換を活発にすることができて、非常に有意義なものとなった(物理工学科二回生)。

 この授業は京大に入学してから一番大変な授業であったが、同時に、一番わくわくした授業でもあった(物理工学科二回生)。

 何かやりたいと思っていても、能動的に行動できる人は少ないと感じます。そういった中で、この授業では自分から積極的に物事を考える力を養えると思います。自分はハッカソンなどにも出てみたいけど尻込みしていたので、そういう人にとっても良いステップアップの機会になると思います(物理工学科三回生)。